クレージーキャッツ 東宝クレージー映画 クレージー作戦シリーズ (2005.07.24)
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1.クレージー作戦 先手必勝 2. くたばれ!無責任 3. 香港クレージー作戦 4. 無責任遊侠伝 5. 大冒険
6. クレージーだよ 奇想天外 7. クレージー大作戦 8. クレージーだよ 天下無敵 9. クレージー黄金作戦 10. 怪盗ジバコ
11. ぶちゃむくれ大発見 12. クレージーメキシコ大作戦 13. クレージーの大爆発 14. だまされて貰います  
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植木等主演の無責任シリーズ「ニッポン無責任時代」(1962年7月29日)、「ニッポン無責任野郎」(1962年12月23日)の大ヒットの勢いを受け、東宝は、渡辺プロ社長、渡辺晋との共同により、クレージー・キャッツのメンバーが、それぞれの個性を生かし、一致団結して活躍するというグループ主演作品を製作する。これが後に、植木等主演の「日本一」シリーズとともに、東宝のドル箱シリーズとなる「作戦」シリーズである。

クレージー作戦シリーズ第1弾! 「クレージー作戦 先手必勝」
1963年3月24日公開 久松静児監督作品 (併映・戦国野郎)
●クレージーキャッツ奇想天外ボックス
<TDV17165D>
2007年6月22日
ボックスタイトルにもなったクレージ映画屈指の名作、谷啓主演の「クレージーだよ 奇想天外」、「クレージー作戦 先手必勝」、完全初ソフト化となる「クレージーのぶちゃむくれ大発見」、そしてクレージーの大爆発」4作品収録。
●LD<TLL2534>
1998年9月25日

※4ページ解説書封入、劇場予告編収録
●クレージーキャッツ奇想天外ボックス封入DVD
<TDV17165D-1>
2007年6月22日
・シネスコスクイーズ収録(95分58秒) ・チャプター付 ・日本語字幕、オリジナルモノラル音声収録 ・ 解説書封入。
【特典】
・劇場予告編 ・ギャラリー(ポスター、ロビーカード等14枚静止画収録)
・東宝クレージー映画への招待(6分57秒)
鈴木啓之、町田心乱ナレーションによる東宝撮影所の歴史をふりかえるドキュメンタリー「東宝撮影所ヒストリー」。「クレージー作戦 くたばれ!無責任」の貴重なロケーション風景もモノクロだがちらりと映る。

もめ事をなんでも解決するという「株式会社よろずもめごとまとめや」を開業する調子良い上田ヒトシ(植木等)、得意の仁義でケンカやもめ事を仲裁する親分肌の花木ハジメ(ハナ肇)、泣き落とし作戦が得意の谷村啓太郎(谷啓)、おかまの弁護士・石山英太郎(石橋エータロー)、ポンコツ屋で示談屋の犬養弘(犬塚弘)と計算の得意な佐倉千里(桜井センリ)の凸凹コンビ、上田ヒトシを兄貴と慕うバカ真面目なワル・安井真(安田伸)ら、メンバー七人のキャラクターに合わせた役柄設定が秀逸。

メンバーそれぞれのキャラクターありきで、そのストーリーを作り上げていくという構成はおそらく渡辺晋やハナ肇の構想によるものであろうが、特に、いつも鼻毛を抜きながら神経質そうな素振りをみせる谷啓が印象的。
後の「作戦シリーズ」と比べると突き抜けた面白さはないが、各所に小ネタを効かせた味わいのある日本喜劇映画の王道的作品で、特に情に流されるオチなど人情喜劇風の趣だ。

中尾ミエ、池内淳子、淡路恵子、加東大介、沢村貞子(加東大介と沢村貞子は実の姉弟)、先日亡くなった2代目おいちゃん松村達雄、柳家金語楼、上田吉二郎、十朱久雄、坂本九、マーブルチョコの子役・上原ゆかりなど脇を固める出演者もオールドファンには懐かしい豪華メンバーで、バヤリースオレンジや、広っぱや空き地が広がる昭和の風景も、なんとも懐かし限りである。

LD巻末には、別バージョンや予告編の為に撮影されたシーンなど貴重な映像がてんこ盛りの劇場用予告編が収録されている。「ウェストサイド物語」ばりに足を高く上げたスチールで有名な箱根スカイラインでロケされた本編未収録の行進ダンスシーンは、この予告編内で数秒だけ見る事ができる。後のシリーズ代表作「クレージー大作戦」を彷彿させるシーンだ。
また、本編ラスト近く、上田ヒトシが留置場で見る夢と、予告編の冒頭に登場する大きな地球の模型は「キングコング対ゴジラ」(1962年8月)の冒頭に使われたものの流用だ。

●いろいろ節 レトロチックなタイトルバックに流れる「いろいろ節」映画オリジナルバージョン。
●スーダラ節 留置場で横になりながら、植木等が歌う「スーダラ節」鼻歌バージョン。次作「くたばれ!無責任」でも、プールのトイレで歌われている。
●やせがまん節 "色男はつらい〜"のさわりの部分が歌われる鼻歌バージョン。植木等が歌うと、まったくイヤミな感じがしないのが不思議だ。
●ドント節 会社をクビになった上田ヒトシが強がりで歌う、こちらも鼻歌バージョン)
●これが男の生きる道 「ドント節」から一転して、こちらはクビになった上田ヒトシのサラリーマン生活の侘しさを映画本編とシンクロして表現。
●五万節/まとめやの歌 「よろずまとめや」の宣伝ソングとして街頭で歌われる五万節の替唄バージョン。"こらさっと"と合いの手の入る放送禁止バージョンのオリジナル版が元となっているが、"やくざの大幹部"の部分が入った放送禁止バージョンは、今では「クレイジーキャッツ コンプリートシングルス/HONDARA盤」で聴く事ができる。
●クレージー作戦のテーマ 箱根スカイラインを疾走する車中、クレージー全員で意気揚々と唄う映画オリジナル曲。
●ホンダラ行進曲 作詞した青島幸男自身が最も好きな歌という名曲。「ホンダラ」と、ふざけたようなタイトルだが、聴く人の立場や環境により、いろいろと解釈できる実に奥深い曲だ。
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クレージー作戦シリーズ第2弾!「クレージー作戦 くたばれ!無責任」
1963年10月26日公開 坪島孝監督作品 (併映・大盗賊)
●LD<TLL2496>
1997年3月25日

※4ページ解説書封入、劇場予告編収録
●DVD<TDV15293D-2>
2005年9月30日
・シネスコスクイーズ収録・劇場予告編 ・ポスターギャラリー・解説書封入・チャプター付 ・日本語字幕付、オリジナルモノラル音声、オーディオ・コメンタリー(坪島孝監督、佐藤利明)音声収録。
※映像がきれい。コメンタリーもグッド!

インパクトに欠けた前作「クレージー作戦 先手必勝」の反省からか、強烈だった無責任というイメージを逆手にとってアンチ無責任として企画製作された本作。

1963年7月、同時期に公開された植木等主演の「日本一の色男」も、無責任男から有言実行タイプのスーパーサラリーマンに変身させているが、東宝と渡辺プロ、そしてクレージー・キャッツのメンバーらスタッフ一同の、無責任からの脱却という強いイメージ変更戦略を思い切って打ち出した意気込みが功を奏し、クレージー作戦シリーズのほぼ原形がここに完成する事となった。
自己否定という強い批判もあったようだが、結果的には、後のクレージー映画シリーズの長寿化に成功した要因ともなり、その意味からも大きなターニングポイントといえる作品である。

監督は、本作が監督2作目だった新人、坪島孝。映画全体の流れの中でのギャグを大切にし、なんともいえぬ可笑しさを誘う、そのアメリカンコメディ的な感覚は、古澤憲吾監督とはまた違った趣の作風でクレージー映画をドル箱シリーズに作りあげていった。
また、本作の重要な小道具である「ハッスル・コーラ」など、そのアイデア溢れる演出も坪島孝監督の持ち味である。

会社一の無気力社員である田中太郎こと植木等が、同じくダメ社員としてのレッテルを貼られたクレージー・キャッツのメンバーらと共に一致団結して活躍し、無責任な会社にオサラバするというサラリーマンコメディだが、いつもはスーパーサラリーマン役の植木等がモノクロ画面にショボくれた姿で現れる意外な展開の冒頭で、アッという間に映画に引き込まれてしまう。
そして、興奮剤入りのハッスル・コーラを飲みハッスルし始めると、モノクロ画面がみるみるうちにカラー画面に変わり、いつもの威勢のよい高笑いの植木等が現れるというのも、なんともツボを得たチャーミングな演出である。

時折、挿入される空想シーンもクレージーのコントを見ているようで楽しく、特に、丸の内のオフィス街を生き生きと行進するラストなど、当時のクレージー・キャッツの破竹の勢いを感じる事ができるパワー溢れる名シーンとなっている。

●ハッスル ホイ ハッスル・コーラを飲みハッスル社員になった田中太郎が"ハッスル、ハッスル"と歌う本作のメインテーマともいえるインパクトある曲だ。オープニングからメインタイトル後すぐの本曲までの、いわゆる「つかみ」のシークエンスは何度見ても面白い。1991年11月25日にリリースされたアルバム「スーダラ外伝」に、一部構成を変えて収録された。
●スーダラ節 植木等がプールのトイレでさわりを歌う。ハッスル・コーラの成分がオシッコと共に抜けて、モノクロ画面に戻ってしまうのが愉快だ。
●オート三輪進軍ラッパ 昭和38年の首都高速銀座線をオート三輪車を走らせながら勇ましく歌う進軍曲。当時にタイムスリップしたような印象を受けるシーンだ。戦争の空想シーンからのオーバーラップも効果的。
※トミカリミテッドヴィンテージ東宝名車座Vol.6(下記写真参照)
●ホンダラ行進曲 前作「先手必勝」から引き続いての登場曲。クレージーの面々がいかにも楽しそうに歌うが、見ているこちらも思わず元気がでる。これこそがクレージー映画の魅力なのだ!
●くたばれ!無責任 丸の内のオフィス街を行進しながら唄う「くたばれ!無責任」。本作のテーマが色濃く表現されている印象的な曲だ。このシーンは、後の「クレージー黄金作戦」のラスベガスでのハイライトシーンでもセルフリメイクされたが、きっとこのシーンはクレージー・キャッツのメンバーのお気に入りのシーンであったに違いないと思う。
<オマケ> 1/64 トミカ リミテッドヴィンテージ 東宝名車座Vol.6
東宝映画に登場する名車をミニチュアカーとして製品化したトミーテック”東宝名車座”シリーズ、「クレージー作戦 くたばれ!無責任」版。
鶴亀製菓“ハッスルコーラ”の宣伝カー仕様のダイハツミゼット。オプションパーツとしてハッスルコーラの瓶が入っているケースが付属。
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クレージー作戦シリーズ第3弾!「香港クレージー作戦」
"CRAZY CATS" GO TO HONG KONG
1963年12月22日公開 杉江敏男監督作品 (併映・海底軍艦)
●LD<TLL2500>
1997年5月1日
※劇場予告編収録 

クレージー映画、初の海外、香港ロケを敢行。
当時の東宝は香港のキャセイ・オーガニゼイション(映画会社「MP&GI(國際電影懋業公司)」)と強い提携関係にあり、香港のスター尤敏(ユーミン)と「100発100中の男」宝田明を主演にしたロマンス映画「香港の夜」(61年)、「香港の星」(62年)、「ホノルル・東京・香港」(63年) の香港三部作を含めた8本を合作で製作している。

そして、この強いコネクションを利用して香港ロケを敢行したのが、「お姐ちゃん罷り通る」(59年)、「社長洋行記」(62年)などであり、この2作品を監督した杉江敏男が、その実績を買われ本作「香港クレージー作戦」でも監督を担当した。


若大将シリーズ第8作「レッツゴー!若大将」(67年)も香港ロケを敢行しているが、東宝映画のドル箱シリーズで香港とは無縁だったのは特撮怪獣シリーズくらいのものといっても良い(「北京原人の逆襲」などはあるが…)。

●VHS<TG0614-V>
1981年
※90分短縮テレビサイズ版

ちなみに、キャセイ社は、ロク・ワントー(陸運濤) 社長が1964年の飛行機事故で急逝してしまい、映画事業が急速に衰退。代わりに台頭するのがライバル会社であった、ランラン・ショウ(邵逸夫)が設立し、「キル・ビル」のオープニングクレジットでも一躍有名になった「ショウ・ブラザース(邵氏兄弟香港有限公司)」である。
「レッツゴー!若大将」(香港題名:逍遥青春)公開と同年の1967年に、香港映画史上初の100万ドルの興行収入を記録した大ヒット作品、ジミー・ウォング (王羽)主演の「獨臂刀」を製作公開するなど、ショウ・ブラザースの黄金時代がしばらく続くが、1970年にショウ・ブラザースの製作本部長だったレイモンド・チョウが独立しゴールデンハーベスト社を設立。そして、そのゴールデンハーベスト社からひとりのスーパースターが香港映画界にデビューする事となる。
そう、あのブルース・リーが「唐山大兄/THE BIG BOSS」(ドラゴン危機一発)で、香港映画史上最大のヒットをとばすのである。
「香港クレージー作戦」の香港ロケから約8年後の事となる。

と、大きく話がそれてしまったが「香港クレージー作戦」。
香港企業により立ち退きをくらった"のん平横丁"のクレージーの面々が、調子が良く頭の切れる第百商事の脱サラマネージャー植田等の元、一致団結して香港に乗り込み日本料理店を開店して成功するまでを描いた奮闘物語だが、なんと言っても本作で注目すべき点は、「演奏中のポジション取りなどの小さないさかいが徐々にエスカレートしていき、最後には楽器ともども全員ボロボロのヨレヨレ状態になってしまう」という、谷啓演出の音楽コントをクレージー映画で初めて見せる事であろう。
映画的なオーバーな仕掛けが逆に古臭さを感じさせもするが、それでももう二度と見る事の出来ない演奏シーン(あてぶりだが…)を、しかもカラーで見られるというのはうれしい限りだ。
ちなみに、映画の中でのバンド名はクレージー・マウス(ハナ肇が叩くドラムにミッキーマウスもどきの絵がある事からわかる…)。
なお、クレージーキャッツメモリアルに収録されている「植木等ショー」「クレージーキャッツ結成10周年コンサート」のステージでも同じような音楽コントを生のステージ上で披露しているが、臨場感溢れる面白さは、この映画の音楽コントの比ではない。
※クレージー以前にも"あきれたぼういず″などの偉大なボードビリアン達がいたが、"あきれたぼういず″の歌謡漫談の流れを汲むのが"灘康次とモダンカンカン″や、あたしゃ、も少しィ〜背が欲しいィ〜ッの"玉川カルテット″など。そして、クレージーの流れを汲むのが、ザ・ドリフターズ、ドンキー・カルテット、ビジーフォー、サザンオールスターズだ。(えっ、サザンは違うって?…)

自分のキャラクターを楽しそうに演じている植木等やクレージーの面々もちろん、植田等の上司・有島一郎、第百商事社長・柳家金語楼、そして、人見明、由利徹など、顔をだすだけで、画面から可笑しさがにじみでるという名バイプレーヤー達も健在だ。
せっかく香港ロケしたにも関わらず、映画後半の香港に着いてからの件よりも、前半のクレージーの面々が香港に行くまでの顛末の方がイキイキしているのが皮肉な所だ。
当時の日本人が簡単に行く事の出来なかった海外旅行の雰囲気を映画館で味わえる事、それだけでも映画として成立してしまう時代だからなのであろうが、クレージーキャッツ人気と海外ロケという華やかさで映画は大ヒット。
前年の「ニッポン無責任野郎」に続いてのお正月映画として公開されたクレ−ジー映画は、完全に東宝のドル箱シリーズとなった。(2005.07.31)

"のん平横丁"の風情はおそらくセットではあろうが、東京池袋のナンジャタウンの福袋三丁目(現、福袋餃子自慢商店街)そのままだ。
また、クレージー・キャッツが、初の海外旅行を、映画の中の台詞よろしく"小学生の遠足気分"と同じように楽しんでいるのが手にとるようにわかるのが面白い。 浜美枝は完全にクレージー映画のマドンナとなった。

●ショボクレ人生 江戸っ子料理屋、ハナ肇扮するハッちゃんの店で、石橋エータロー、桜井センリのおかまの流しコンビの演奏で植田等が歌う。第1小節は石橋エータローが歌うが、顔を振りながら一生懸命ビブラートをかける姿がいかにもオカマっぽい…。
●チンドンヤ 日本料理店「菊花亭」宣伝の為に、香港の繁華街を「おいしくあるよ〜♪」とビラをまきながら演奏するクレージー楽団。取り囲む香港の人々が本当に面白がっているのがわかる。
●めんどうみたョ 香港のナイトクラブ“オーキッドスマイル”で植田等が唄う。クレジットタイトルは「股旅の唄」。途中、尺八を吹く不気味なハナ肇が現れる。
●おんなのこだもん “オーキッドスマイル”にて、クレージーをバックに中尾ミエが歌う。中尾ミエ、この時17才。今とほとんど印象が変わらないのが凄い。
●どうせやるなら 戦争が終わって以来、一度も笑った事のないという香港の実力者、張を笑わす事に成功し、日本料理店「菊花亭」は大繁盛する事となる。“どうせやるならでっかい事やろう〜♪”と香港の街並みをバックに植田等が気持ちよく歌う映画オリジナル曲。間奏で見せる植木ダンスが楽しい。

クレージー作戦シリーズ第4弾!「無責任遊侠伝」
1964年7月11日公開 堀川弘通監督作品 (併映・悪の紋章)
クレージー作戦シリーズ第5弾!「大冒険」
1965年10月31日公開 古沢憲吾監督作品 (併映・喜劇 駅前大学)
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クレージー作戦シリーズ第6弾!「クレージーだよ 奇想天外」
1966年5月28日公開 坪島孝監督作品 (併映・アルプスの若大将→)
●LD<TLL2226>
1994年7月1日
※4ページ解説書付、予告編収録
●クレージーキャッツ奇想天外ボックス 封入DVD
2007年6月22日
<TDV17165D-2>
・左右にも黒が表示されるフルシネスコスクイーズ収録(102分12秒) ・チャプター付 ・日本語字幕、オリジナルモノラル音声収録 ・ 解説書封入
【特典】 ・劇場予告編(本編未使用映像収録) ・ギャラリー(ポスター、ロビーカード等13枚静止画収録) ・鈴木啓之、町田心乱の進行による野川由美子(前半)、坪島孝監督(後半)のオーディオコメンタリー収録

平和で呑気な遊星アルファからやってきたミステーク・セブン(谷啓)。その使命は地球から戦争という悪習慣をなくす事。
原水爆の開発や戦争を繰り返す地球人に危機感を募らせた遊星アルファの長官(植木等)からの命令を嫌々ながらも引き受けた遊星人ミステーク・セブン。
さしあたっては、戦争放棄を憲法で決めている日本に下り、交通事故に遭った鈴木太郎(桜井センリ)をボディスナッチャーし、その活動を開始するのであったが…。

東宝クレージー映画初の主演作となった谷啓。押しの植木等とは対照的な引きの谷啓、そのコメディアンとしての魅力を最大限に引き出す事に成功した作品である。
DVDのジャケットカバーからは、ひょうきん族のタケちゃんマンのような内容を想像するが、実際にはファンタジー色の強いコメディで、余韻の残るラストの秀逸さは、クレージー映画の中でも特に人気が高い。
脚本は田波靖男、監督は坪島孝。

ミステーク・セブンである谷啓が、桜井センリの鈴木太郎の体に入ると、突如として桜井センリが谷啓に変わるのだが、劇中の登場人物には変わったようには見えない。(この演出が、悲しくも切ない名エンディングにつながるわけだが…)。
少年のように純粋で無垢な心を持ったミステーク・セブンが、地球人(日本人)と交わす珍妙なカルチャーギャップが映画前半の笑い所となる。鈴木太郎の隣に住むゆかり(野川由美子)、ミステーク・セブンの監視に現れた関西弁の零八=ゼロハチ(藤田まこと)との絶妙なカラミは、なんともいえない可笑しさだ。

自衛隊の存在意義、利益優先主義の企業。この世でお金で買えないものなんかないわ、と言いきり、平気で男と寝るヒロイン和子(星由里子)。そして、本音と建前をズバリと語る自称総理大臣の精神異常者(植木等=長官との二役)など、その展開は、当時としてはかなり過激である。
しかし、このファンタジーの対極にある痛烈な社会風刺こそ、かのチャップリンの風刺喜劇にも通じる大いなる笑いの魅力。

LD封入の解説書兼復刻版プレス・シート(1966.4)によると、当時の東宝は風刺ネタを宣伝材料にする事は得策ではないと考えたようだが、社会風刺を盛り込んだ本作を当時のキャッチフレーズ"明るく楽しいみんなの東宝"カラーに合わないと判断したのだろうか… これも時代だ。

同時上映は「アルプスの若大将」(→詳細はこちら)。
1966年の興行収入で2億7450万円、観客動員数250万人以上の東宝トップの興行記録をつくったのもうなずける豪華な2本立てだった(邦画全体の興行収入としては第8位)。(2009.06.21)

●虹を渡って来た男 本作主題歌。作詞は脚本を担当した田波靖男、作曲は萩原哲晶。タイトルは、ダニー・ケイ(谷啓の芸名の由来)の「虹を掴む男」のもじり。この曲を聴くと 今でもミステーク・セブンは、あの遊園地(横浜ドリームランド)で綿菓子を作り続けているのだろうかと想ってしまう。
♪〜ヒンビキ カラカラ ヒビリキリン…、メルヘンチックな名曲だ。
●作詞・作曲・題名不詳(※俺のハートは3333万3330℃) 寺内タケシとブルージーンズをバックに、♪〜俺のハートは真っ赤に燃えてる三千三百三十三万三千三百三十度(3333万3330℃) と、ジミー健ことロッケンローラーの内田裕也が怪しく唄う。(ちなみに、アカデミー賞監督滝田洋二郎を見い出したのは内田裕也。プロデューサーとしての能力はやはり超一流だ)。
なお、寺内タケシとブルージーンズは、同時上映の「アルプスの若大将」にもダブル出演していると解説書や関連文書等に記載があるが、正確にはブルージーンズのみで寺内タケシは「アルプスの若大将」には出演していない。
また、バックで演奏するブルージーンズの立ち位置がシーンによって変わるため、非常に見分けにくいが、このすぐ後、ブルージーンズを脱退して、ワイルドワンズを結成する事となる加瀬邦彦の姿は、両作品で見る事ができる(→詳細はこちら)。
●イヤダイヤダと云ったのに 下痢でトイレへ籠もったままのジミー健の代役として、谷啓が特有のハイトーンで唄う。大ヒットしてしまい、ミステーク・セブンが人気スター、タロー・鈴木になっていくが、これは気弱な主人公にありがちな巻き込まれコメディの典型だ。
ガチョ〜ンやビロ〜ンと同じように、♪〜今じゃハフハフハフハフハー と唄う歌詞がユニークで楽しい。ちなみに、劇中ではワールドレコードレーベルで、演奏(またはB面?)は“虫歯ちゃん”らしい…
●文句節 自称総理大臣の精神異常者(正木という名前らしい)を演じる植木等が、本音と建前をズバリと唄う。 ♪〜代議士は違反をするな 役人は汚職をするな 男は浮気をするな 〜こんなこたぁいうだけ無理だね と唄うその姿は脇役ながら強烈な印象を残す。
キ○ガイを連呼する危ないシーンでもある。

↓↓↓↓
●クレージー作戦シリーズ、さらに続く!
COMING SOON!
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