第36回(2009.08.23更新)

もう一人のラストサムライ
〜藤岡弘、堂々たるアメリカ主演作!「SFソードキル」〜

SFソードキル SWORDKILL
1984年エンパイアピクチャーズ製作
1986年3月(アメリカ劇場公開)/1986年12月20日(日本劇場公開)
監督:J・ラリー・キャロル/製作・原案:チャールズ・バンド/製作総指揮:アルバード・バンド、アーサー・H・マスランスキー/脚本:ティム・カーネン/撮影:マック・アールバーグ/特殊メイク:ロバート・ショート/音楽:リチャード・バンド
1985年パリ国際ファンタスティック&SF映画祭批評家賞受賞
(※「ウィキペディア」には1986年と記載があるが1985年の間違い)
 
国内盤LD
1986年7月21日
ベストロンビデオ<G88F5358>
"SWORDKILL"タイトルバージョン 82分
テレビサイズ版収録だが、35mmスタンダード撮影そのままのサイズで収録。
・ジャケット裏に解説付
 
ジャパニーズ・サムライ・イン・アメリカ
日本の侍が突然、現代のロスに現れたら…?

「SFソードキル」は、SF映画の定番ともいえる "本来存在すべき場所ではない時代や世界へまぎれこんでしまった者の悲劇"を描いた超怪作ムービーである。

製作はエンパイア・ピクチャーズ。
1983年に設立、低予算ながら愛すべきB級SFホラー作品を専門に制作した映画会社。設立者のチャールズ・バンドは最盛期には"80年代のロジャー・コーマン"とも呼ばれるまでになったが、1990年に資金難から倒産してしまった。(チャールズ・バンドは、その後も懲りずにフルムーン・ピクチャーズを設立)
「SFソードキル」は、そんなエンパイア・ピクチャーズの第1回製作作品でもある。

監督はラリー・キャロル。
サムライがロスのストリートギャングを斬り捨てるシークエンスなど、「用心棒」桑畑三十郎の"腕は今見せる"のシーンをイメージしているのは明らか。寿司レストランでも"トシロー・ミフネだわ!"と驚かれるなど、随所に黒澤映画の影響がみられる。

主役のサムライ タガ・ヨシミツを演じるは藤岡弘、。
(※「藤岡弘」は現在「藤岡弘、」と、名前の最後に句読点を含めるように改名している)
本作の見所でもあるサムライ及び武士道、また古式日本の描写に関しては藤岡弘、の強いアドバイスに拠るところが大きく、その意見は脚本の改訂にまで及んだという。
本作品が80年代にアメリカで巻き起こっていたカンチガイ、ジャパニーズ・ニンジャ映画ブームとは一線を画し、日
本人が見てもその描写に違和感がないのは彼の功績によるものである。
海外の資料によると藤岡弘、は"日本のTVスター"とクレジットされているが、三船敏郎や後の渡辺謙にも劣らぬ堂々としたサムライぶりは、ソニー千葉にも負けない国際スターとしての風格を感じる事ができるのだ。
そう、まさにもう一人のラストサムライなのである。

時は1552年、日本。
マカベ一族の侍、タガ・ヨシミツは、捕われた妻チドリ(コバヤシミエコ)を救うため単身、敵の元へ向かうが卑怯な手段により妻を失い、自らも矢を受け、湖底に沈んでしまう。
・・・
サムライが目覚めたのは、それから432年後の現代。遠い異国の地アメリカ、ロサンゼルスだった。氷漬けの冷凍冬眠状態で発見された彼は、カリフォルニア低温外科療法研究所に運ばれ、蘇生されたのだ。

ヘリコプターやテレビに映るヘビメタバンド、街を走る自動車にカルチャーショックを受けるヨシミツ。
値打ちものの日本刀を盗もうとした研究所職員を正当防衛から斬り、そのまま研究所を脱出してしまうヨシミツ。
そして、威風堂々とロスの街をゆくジャパニーズ・サムライ、ヨシミツは老人にたかるストリートギャングを一刀のうちに斬り捨ててしまうのだった。
戦国時代を生きていたヨシミツにとって、ここにいるべき場所はない。
助けた老人との心の交流も束の間、殺人犯として警察から、そしてスキャンダルをおそれた研究所からも追われる身となってしまうのだ。

いかにして生きるか、いかにして死ぬか。
ただひとりの理解者であった女性記者クリスに亡き妻の面影をみたヨシミツは…。

  ▲ページTOPへ
 
 
国内盤DVD 2004年10月29日
東宝<TDV3259D-1>※廃盤

ニューマスター版 GHOST WARRIORバージョン 80分57秒 1.85:1ビスタスクイーズ(スタンダードサイズ天地マスキング版)収録 オリジナルモノ音声/日本語字幕収録 チャプター付
・藤岡弘、小松沢陽一(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭プロデューサー)によるオーディオ・コメンタリー
・オリジナル予告編(スタンダードサイズ2分58秒)
・藤岡弘、秘蔵フォトギャラリー
・冒頭に藤岡弘、の解説映像 収録

■藤岡弘、の貴重な音声解説(一部)
・冒頭の日本のシーンは富士山近辺を想定し、カルフォルニア州のマンモスマウンテンで撮影された。 英語テロップでは"MOTOSUKA, JAPAN"と表記されるが、これは"MOTOSUKO(本栖湖)"の表記間違いとの事。
・冒頭で藤岡弘、が使用している日本刀は本物の真剣。その他のシーンでも、要所では真剣を使用している。(なんともいえぬ緊張感が画面からにじみでている)
・本作が製作されるに至った背景には、80年代初頭にアメリカで巻き起こったニンジャ映画ブーム、また、アメリカでベストセラーになった宮本武蔵の「五輪書」の影響などがあったとされている。
・藤岡弘、に主役のオファーがきた理由は、エンパイア・ピクチャーズのチャールズ・バンドがアメリカで放送された藤岡弘主演のフジテレビ系時代劇スペシャル「二人の武蔵」(1981年製作)を見た事によるもの。
・藤岡弘、は、本作撮影の為、1983年10月1日にアメリカへ出発。同月7日から撮影が始まり、12月3日に帰国している。
・本編内に登場する"タカギ"ジャパニーズ・アンティークの陳列品には、当初いつものように中国や東南アジアのものが多数混ざり合っていたという。撮影前にそれを見た藤岡弘、は日本の物だけを厳選し、陳列品すべてを並べ替えさせたとの事。日本人が見ても違和感を覚える物はまったく飾られていないのはその為である。
※その他、トリビアエピソードがまだまだ聴ける…!
 
---SFソードキル 画像比較---
 
国内盤LD
SWORDKILLバージョン、35mmスタンダード撮影そのままのサイズと思われる。
国内盤DVD
GHOST WARRIORバージョン、 天地マスキングのビスタスクイーズ収録。
 
国内盤LD
ピストル対刀。ここでも黒澤明「用心棒」の影響が見られる。
 
国内盤DVD
足元のパイプ椅子が見えなくなっている。
 
 
国内盤LD
ジャパニーズ・アンティーク“タカギ”。大きなチョウチンなど、日本人が違和感を覚えるようなものはまったく見られない。
 
国内盤DVD
天地の情報量はカットされているが、左右の情報量は若干多い。 製作時期からいって「スーパー35」方式を採用しているものと思われる。
  ▲ページTOPへ
 
コラム一覧はこちら→