第20回(2003.03.22更新)

「獨臂刀」 THE ONE-ARMED SWORDSMAN
香港の片腕剣士 リメイク比較!

オリジナル版 ■獨臂刀 THE ONE-ARMED SWORDSMAN
 
 
●米国版VHS(98年7月9日泰盛影視) ●香港版VHS(海洋録影)
テレビサイズ収録、國語音声、北京語・英語字幕付。本編116分30秒収録版。
※邦題「片腕必殺剣(獨臂刀)」「続・片腕必殺剣(獨臂刀王)」「新・片腕必殺剣(新獨臂刀)」国内盤DVD、キングレコードより2005年10月5日リリース!詳しくはこちら→
 

「獨臂刀」(ドゥビーダオ/THE ONE-ARMED SWORDSMAN、獨臂とは片腕の意味で、日本語読みでは「どくひとう」)。
監督・脚本 張徹/チャン・ツェー、主演はもちろん王羽/ワン・ユーことジミー・ウォング。
武術指導は、ジミー・ウォング後年の傑作「片腕カンフー対空とぶギロチン」(詳しくはこちら→)でも手を組む事となるラウ・カーリョン。

1967年ショウ・ブラザースにより製作公開され、香港映画史上初、100万ドルの興行収入を記録した大ヒット作品「獨臂刀」。 この初主演作品によりジミー・ウォングは、日本以外のアジア圏で天皇巨星と呼ばれる大スターへの道を歩む事となる。

「獨臂刀」は、日本映画「座頭市」が元ネタである。盲目というハンディキャップを克服し、はびこる悪を斬りまくるヒーローが活躍する座頭市シリーズは、当時の香港で大ヒット。そして、この盲目というハンディキャップを片腕のヒーローに移しかえたものが片腕の剣士が活躍するドゥビーダオ「獨臂刀」である。

師匠を助けるために死んだ父の跡を継ぎ、同じ師匠を父と仰ぎ、厳しい鍛錬にあけくれるジミー・ウォング演じる方剛/ファン・カン(「破れ!唐人剣」では王剛/ワン・カン)。
武芸に秀でた方剛は、道場の後継者ともくされていたが、兄弟子達から嫉まれ、いさかいが絶えぬ日々が続く。そして、争いを避けるために、遂に道場を去る決意をした方剛だが、師匠のわがままな娘は方剛を愛するがゆえの嫉妬心から、なんと彼の右腕を切り落としてしまう。
右腕を切り落とされ瀕死の状態をさまよう方剛を救ったのは、死んだ父がやはり武侠家(義理と人情を重んじる剣豪)のとある娘であった。手厚い看護を受けるも、失った右腕の痛手からなかなか立ち直れない方剛。娘にからむならず者からもいいようにやられ、失意にくれる方剛だが、娘が差し出した秘伝の剣術指南書と、片腕でも自由に操れる父の形見である折れた剣をヒントに獨臂剣をあみ出す事に成功する。
そしていよいよ、自らあみだした獨臂剣とともに、亡き父の仇でもある武術道場を乗っ取ろうとする悪との闘いにおもむくのであった…。

初期「座頭市」がそうであったように、ハンディキャップを背負ったヒーローという、この「獨臂刀」もひたすら悲壮感漂う重苦しい雰囲気につつまれている。
しかし、たとえその娘が自分の右腕を切り落とした人物としても、恩義のある師匠の為に決死の覚悟で道場を救う義理と人情を重んじる心。師匠の娘と瀕死の方剛を救った娘との、微妙な三角関係の中で揺れ動く方剛の心など、ジミー・ウォングの母性本能をくすぐるようなその魅力は、この映画の重苦しい雰囲気の中でこそ逆にオーラのごとく輝いている。
大ヒットした「獨臂刀」は、当然のことながら「獨臂刀王」などの続編が作られシリーズ化されたが、アジアのスーパースター、ジミー・ウォングが日本の映画ファンの前に初めて姿を現すのは、1971年1月13日に公開された座頭市シリーズ第22作「新座頭市 破れ!唐人剣」(獨臂刀シリーズ番外編「獨臂刀大戰盲侠」)であった。
この「獨臂刀」を見てから、「新座頭市 破れ!唐人剣」を再見すると、また違う面白さも感じる。
「新座頭市 破れ!唐人剣」はこちら→
「燃えよドラゴン」でリーの父親(といわれている「Old Man」)を演じたHo Lee Yan、「怒りの鉄拳」などの他リー主演作などにも出演している田豐/ティエン・フン、田俊/ジェームズ・ティエンなどの姿も見られる。

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リメイク版-1 ■新獨臂刀 THE NEW ONE-ARMED SWORDSMAN
 
●米国盤DVD
PanMedia Int`l LTD 1998年頃リリース
テレビサイズ収録、英語音声、字幕収録無し。本編97分48秒収録版米国盤DVD。画質はVHSレベル。
オープニングにはメーカー表記などは一切無く、いきなり本編が始まる。
PanMediaというかなり怪しいメーカーからのリリースで、どうやらこのメーカーは現在、存在していないもよう。LIMITED COLLECTOR`S EDITIONと銘打って発売されたバージョンもあるが、映像は同じもののようだ。
 

1971年日本公開の「新座頭市 破れ!唐人剣」への、ジミ-・ウォング扮する獨臂刀のキャラクター出演は、実は、香港を離れ台湾に渡っていたジミー・ウォングが、ショウ・ブラザースに無断で行った事であった。

その為、ショウ・ブラザースは本家はこちらだと、チャン・ツェー監督のもと新たに製作した映画が「獨臂刀」のリメイク「新獨臂刀」である。主演は当時のショウ・ブラザースの看板コンビ、姜大衛/デビッド・チャンと狄龍/ティ・ロン。武術指導は、やはり「獨臂刀」と同じくラウ・カーリョンだが、香港得意のワイヤーを使ったアクションと凄まじい殺陣で、オリジナルとはまた違った若々しい魅力に溢れた剣劇映画となっている。
デビッド・チャンは、ハマー最後の吸血鬼映画「ドラゴン対7人の吸血鬼」にも出演しているが、精悍で鋭い眼差しは魅力的。そして、日本では香港ノワールの傑作「男たちの晩歌」でなじみの深いティ・ロンの若々しさにも驚かされる。

デビッド・チャン演じる若き武侠家は二刀流の使い手であったが、悪役である三節棍の達人との勝負に負け、二度と剣を持たぬと自らの右腕を切り落とす。そして、人知れず町の酒場で働くようになるが、生きる意味を失った彼は、いまやならず者にからまれても、なすすべなく耐えるしかないほど、落ちぶれ果ててしまうのであった。
そんな彼を救うのが、もう一人の主役、ティ・ロン演じる若き武侠家である。生きる意味を見つけるよう、励まし力づけ、やがて二人は熱い友情に結ばれる事となり、兄弟の契りを結ぶ。酒場の娘との淡い恋も芽生え、閉ざされていた彼の心も徐々に開き始めていくのだった。
しかし、三節棍を操る悪の一味がいよいよはびこり、敢然と立ち向かったティ・ロン演じる武侠家は、無残にも胴体を真っ二つにされ惨殺されてしまうのであった。親友を殺され、怒りに震えた片腕の武侠家(デビッド・チャン)は、ついに獨臂刀を身に付け、親友の復讐と片手とともに失った武侠家としての誇りを取り戻すために、単身、敵の巣窟に乗り込むのであった!

橋の上での100人斬りや、意表をついた三節棍とアクロバチックな獨臂刀の闘いは手に汗にぎる見応え充分なアクション!数ある香港武侠映画の中でも特に人気が高く、傑作と謳われている。

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リメイク版-2 ■ブレード 刀 BLADE
 
●国内盤DVD
(PIBF-97021)
2002年3月22日
スクイーズ・ビスタサイズ収録、オリジナル広東語・日本語音声収録。※ジュエルケース版は廃盤。
 

片腕のハンディキャップを補う為、剣術の指南書から獨臂剣を習得するシーンなどは、より克明に描かれており、遠心力を利用したその技は、とにかく走り、飛び、回る。
また、趣向を凝らした小道具のアイデアはオリジナルにも負けない面白さで、凄みを増した殺陣はオリジナルの元ネタである「座頭市」(特に89年版→詳しくはこちら)により近くなってきている。

当初、「獨臂刀」のリメイクだと知らないで見たわけだが、まったく同じ展開なのでツイ・ハークも遂にコンクリート詰めにされて海の底か?とあわてたが、例のお方には正式に話を通していたようでした…。

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