第32回(2008.04.13更新)

ああ、栄光の巨人軍ここにあり
〜 「ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗」 好プレー珍プレー集〜

1964年2月12日公開 東宝作品
監督佐伯幸三 未ビデオ化作品 90分
2007年11月3日 日本映画専門チャンネル
「24時間まるごと 昭和30年・ニッポンの風景」特集にてハイビジョン放送。
読売巨人軍が9連覇(1965年〜)への道を歩む前々年。1963年(東京オリンピックの前年)のペナントレースを中心に、栄光の巨人軍、ミスター・ジャイアンツ長嶋茂雄が本人役を演じ、自身の活躍と苦悩、ファンとの交流を描いたセミフィクション。

若き日の長嶋の勇姿はもちろん、川上哲治監督(背番号がまだ16)、広岡達朗、藤田元司、国松彰、王貞治、柴田勲、武宮敏明(巨人軍合宿所「多摩川寮」寮長)ら、往年の巨人軍スター選手達が大挙して本人役で出演している。

当時のスポーツニュースはほとんどがモノクロ映像。若き日の長嶋のプレイもモノクロの印象しかなかったので、本作品のカラー映像はかなり貴重ではないだろうか?

多摩川グラウンド(星飛遊馬が入団テストを受けた場所…)でノックを受ける長嶋。
さらに、王選手とともに姿身で打撃フォームをチェックし合いながら、眼の前でブンブン、バットを振り回すのだから涙モノ。しかもハイビジョン!

左から藤田、広岡、国松、王、柴田選手
ちなみに、ON砲の後を打ったシブい5番打者国松選手の奥さんの実家は亀屋万年堂。
その関係で王は「ナボナはお菓子のホームラン王です」というテレビCMに出演した。国松選手は引退後、巨人軍のコーチや二軍監督になり、現在は亀屋万年堂の社長である。
 

長嶋にサインをもらえず、交通事故で死んでしまう少年。それを聞き、気を落とし調子を崩してしまう長嶋。また、プロ野球選手になる事を夢みていた少年が怪我を負いヤケになりグレるが、長嶋の言葉で再び立ち直るなどのスポーツドラマ的にはお約束のフィクションエピソードも描かれるが、長嶋の演技にばかり目が行ってしまい、ほとんど印象に残らない。
ただ、盲学校の生徒達が川上監督や長嶋のユニフォーム姿の体を触り感激する実話に近いエピソードなどは、夢と希望を与えるスター選手と声援を送るファンとのあたたかい交流、プロスポーツの有り方が感じられ、素直に感動する。


そしてジャイアンツの選手のみなさん、台詞がかなりある。
主役の長嶋は、いつものように素のまま笑いながら喋り、一瞬プリティ長嶋かと思わせるほどの余裕で、なかなか巧い演技をみせる。
藤田もツイストを踊ったり、電話をかけながら台詞を喋るという芸達者な演技を見せるが、あとのみなさんが凄い。

という訳で「ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗」好プレー珍プレー集!
六大学リーグでホームラン記録をつくったあの時の空と同じだと、大空を見上げる名演技中の長嶋と藤田だが、広岡は固まっている…
 
ロッカールームでふざけあう選手たち。ニヒルな広岡も当時新人の柴田をからかうなど一見、和気あいあいだが、眼が笑っていなかった…、そこで一発、藤田がツイストを踊るオーバーアクト。みんなマジ笑いに。
手前にいる長嶋に話しかけている川上監督なのだが、眼はカンペを…?何かに取り憑かれたかのような長台詞で目はうつろ…。
 
電話をかけながらの名演技を見せる藤田。なかなかの芸達者だ。
後ろにいるのは何故か舟木一夫だったりする。
 
日本シリーズ直前、西鉄ライオンズの中西太もカンペ(?)を追いながらの必死の台詞読み。
本人役で出演している三木のり平が隣で心配そう。
ちなみに、監督の佐伯幸三は東宝駅前シリーズの監督でもある。
 
完全タイアップ。リポビタンDを一気飲みする王選手。コカ・コーラの看板もやたら見かける。
400勝の金田投手は、当時はまだ国鉄スワローズの選手だったためモノクロ映像のみでの登場だが、王・金田・広岡と並べて「おうっ、金だ、拾おか」なんていうオヤジギャグもあった…。

脇を支える豪華な役者陣がまた凄く、フランキー堺、伴淳三郎、大空真弓、淡島千景、佐原健二、沢村貞子、新珠三千代、淡路恵子、アイ・ジョージ、池内淳子、伊藤久哉、伊東ゆかり、香川京子、加東大介、草笛光子、桜井浩子、宝田明、仲代達矢、西村晃、舟木一夫、南弘子、園まり、三木のり平など壮々たるメンバーが特別出演している。 そして主題歌は坂本九。


伴淳三郎は熱狂的な巨人ファンのタクシー運転手役で出演。巨人が負けて元気の無い伴淳だが、これぞまさしく「三丁目の夕日」のお茶の間風景だ。

優勝祝賀パーティにて、球団応援歌「闘魂こめて」を、服部良一指揮による全員大合唱でエンディングを迎える。

1963年の日本シリーズ、巨人対西鉄の試合。鉄腕稲尾もカラー映像で見られる(しつこいですがハイビジョン!)

1963年の日本シリーズ、最優秀選手賞(MVP)に輝く長嶋。 「巨人、大鵬、卵焼き」、高度経済成長を遂げる日本。
まさに昭和30年代へのタイムスリップ!
■おまけ  

当時の後楽園球場は、ホームランがでると噴水が上がった。

ホームランを打った選手を塁線上に並んでお出迎え。
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